「転校」
その響きに憧れる人もいると聞きます。
転校したことのない人でしょう。
すぐにその場に溶け込める、転校が苦にならない人も、いるにはいるでしょう。
特殊な人です。
内気な子供にとって転校は恐怖です。
ただでも人間関係を円滑に進めるのが苦手なのに、誰一人知らない集団の中に、たった1人で放り込まれるのですから。
国家公務員を父にもつ私は、小学校,中学校,高校と1回ずつ計3回の転校を経験しました。
年齢が高くなるほど、転校先の母集団は排他的になる傾向があります。
私の場合、小学校はまだ馴染めましたが、中学校,高校はずっと“よそ者感”が抜けきれなかったように思います。
そんな状態で学校生活を皆と同じように営んでいかねばならないわけですから、歪みが生まれて来ます。
卑屈であったり、より消極的であったり、性格のネガティブな側面が顕著になっていきます。
内気な子供を真っ直ぐ育てたかったら、転校は極力させない方がいいでしょう。
一方で、新しい環境に身を置くということは転校せずとも多々あるものです。
進学,就職など。
ただしこれは誰も皆、知らない同士の同条件であり、たった1人が“周知同士の集団”に入り込むのとは全く異なるものなのです。
大人になってから、職場の移動などあるでしょうが、これは成熟した人間がビジネスで行っていくものですから、問題にはなりません。
まだ未熟な子供が、本意でなく、未知集団への迎合を強いられること、ここに問題があります。
転校しなければ、私がもう少しマシな人間になっていたかどうかは分かりませんが、少なくとも良い思い出ではありません。
もしできるのなら、引っ込み思案なお子さんを転校させないであげてください。