1984年夏。
深紅のライティングを浴びて、まさにこのアルバムのテーマ“妖精”のイメージそのものの聖子。
夏の「原色ジャケット」シリーズ最後のLPとなりました。
どこか心許ないような不思議な感覚のメロディ、それでいてポップな曲たち。
聖子の新たな一面をのぞかせる作品です。
ティンカーベル 松田聖子 9thアルバムです。
全9曲作詩 松本隆。
作曲は、林哲司,南佳孝,尾崎亜美,呉田軽穂(松任谷由実),大村雅明の面々です。
真っ赤なロードスター
ガラス靴の魔女
いそしぎの島
密林少女
時間の国のアリス
AQUARIUS
不思議な少年
Rock’n Rouge
Sleeping Beauty
私が特に好きなのは2曲。
A面3曲目「いそしぎの島」
昔の恋人と海辺のパーティーでの再会。
未練 と 意地 の狭間で揺れる微妙な女の子の気持ち。
いそしぎ(鳥の名前です)の鳴く海辺の情景をまじえて、それらを繊細に描いています。
言葉選びが巧みで美しく、心に残るフレーズが幾つもあります。
B面4曲目「Sleeping Beauty」
松田聖子の中で2番目に好きな曲です。
恋の痛手で殻に閉じこもってしまった女の子が、新しい出会いでだんだんと心を開いてゆく様子を歌っています。
触ったら壊れてしまいそうな、儚く優しい世界観です。
また、松本隆の紡ぎだす調べ
“裸の陽射しの中で波音聞いていたの”
“不幸の針に刺されて心を閉ざしてたわ”
など心に響きます。
聴くたびに好きになっていくような、アルバムを締めくくるのにふさわしい一曲です。
ティンカーベルは、
22歳、ボーカリストとして成熟しつつある妖精Seikoに触れることのできる秀作アルバムです。