シリーズ第2弾
第1弾はこちら
中学生の頃からでしょうか。
ずっとヨーロッパに憧れていました。
何処へ行きたいとか、何を見たいとか具体的な感覚ではありませんでした。
ただ漠然とヨーロッパに憧れていました。
漠然と…
大学卒業時の、ロンドンを始めにパリ、ローマ、ミラノ、バルセロナ、マドリード、ハンブルク…
途中海外サッカーにかぶれたせいで、ちょっと偏りがありますが、多くの都市を訪ねました。
パリには7,8回、合計すればひと月以上滞在しました。
どの都市でも、特に観光をするわけでもなく、ビール片手にひたすら街を歩き周りました。
そして、ヨーロッパを、その街並みを心に体にいっぱい感じていました。
大人になってから気づいたのですが、やはりその憧れの根底には松田聖子の世界がありました。
ヨーロッパを歌う聖子の歌声が私の深層心理に根付いていたのでしょう。
最も思い当たるのが、
アルバム『Candy』に収められた
ブルージュの鐘です。
「綺麗な鐘の音ディンドン
石畳の道
運河の小舟もディンドン
ゆるやかに流れてゆくわ」
「いつか本のグラビアで見てから
憧れてた古い街並みね
中世から動かない銅像
馬車に乗って街を巡るのよ」
ブルージュがベルギーの都市だと知ったのは遥かのちの事でしたが、松本隆の紡いだ言霊は、私の心にヨーロッパへの想いを確実に植え付けました。
アルバム『Canary』の Wing は、
「翼よ、TOKYOの灯をもう一度だけ
旋回して見せてねNight Flight」
「翼よ、あの街の灯のひとつひとつに
人の愛が揺れてるNight Flight」
飛行機から見下ろす都市の描写から、“旅情”を教えてくれました。
飛行機の旅そのものにも憧れるようになりました。
同じアルバムのタイトル曲の Canary でも、
「見知らぬ子供たちが走る
降り出す雨に追われるように
歩道の脇のシトロエン」
街並みと、そこに溶け込む外車(現地では国産ですが)は、中学生に遠く非日常で、心に刻まれたことでしょう。
松田聖子と、そして松本隆と共にある私の潜在的思考。
陳腐でしようか?
否!
松本隆が紡ぎ、松田聖子が語りべとなる、無限の世界観の中で生きられて、私はとても幸せです。