大学生の頃、二十歳くらいだったでしょうか。
私には、無条件でおか惚れの女の子がいました。
可憐な風貌やその声は、さながら地上に舞い降りた天使。
一日中、彼女のことばかり考えていたものです。
話しかければ、可愛らしい笑顔で応えてくれます。
写真部だった自分からお願いすれば、たまにポートレート撮影のモデルをやってくれたりもします。
その度に有頂天になるも、それ以上となる気配はまったく無い、そんな関係でした。
ある日人づてに、「彼女が僕のことを憎からず思ってるらしい」という噂話を聞く機会がありました。
舞い上がった僕は、緊張にまみれながらも、彼女に近づくチャンスを必死に模索しはじめました。
そんな時です、なんと彼女の方から!「車で本屋まで送って欲しい」って言われたんです!!
チャンス到来です。
まじで気があるんじゃないのか?
車内でどんなお話しをしよう?
そのまま何処かに誘っちゃおう!
お食事どうかな?
などなど、恋の始まる予感に満ち、夢が広がりんぐの時間でした。
そして遂に迎えた当日、丹念に身嗜みを整え、武者振るいしながら愛車で迎えに行くと、約束の場所に彼女は立って待っていました。
なんて可愛いんだ、あらためて噛み締め、胸のトキメキを押さえつけながら近づき、カッコよく「乗りなよ」と促しました。
と、なかなか彼女の方を見ることが出来ず、思い切って助手席に目を向けると…
あれ?いない。
彼女は後部座席に乗り込んで来たのでした。
絶句…。
「俺はタクシー運転手じゃねーよ」と心の中で叫びながらも、何も言えず、本屋まで賃走したのでした。
そして涙をこらえながら帰りましたとさ。
(´;ω;`)ブワッ♡