1984年冬。
華やかなパーティーメイクでノリノリな表情の聖子。
これまでの清純派から少し大人に舵を切った、新しい旅立ちの作品です。
Windy Shadow 松田聖子 10thアルバムです。
全曲作詩 松本隆。
作曲は、大村雅明,SEIKO,Holland Rose(佐野元春),矢野顕子,杉真理,NOBODY,林哲司,細野晴臣 の面々。
マンハッタンでブレックファスト
薔薇とピストル
今夜はソフィストケート
そよ風のフェイント
ハートのイアリング
Dancing Café
MAUI
銀色のオートバイ
ピンクのモーツァルト
Star
本作では、ベッドで朝を迎える歌、結婚話の破局を連想させる歌など、聖子の年齢に合わせてか、これまでタブーだったような一歩進んだ表現を解禁しています。
私は、ずっと清純派でいて欲しかったですが…。
1番のきっかけは、聖子が、おそらく恋愛していたと思われることです。
B面5曲目の「Star」では、当時の松田聖子のホンネともとれる詩がとうとうと歌われています。
“楽屋口の電話優しい声が聞きたい”
“星の数ほどの恋歌があるけど
歌う私には愛しあう自由もないのよ”
“人を好きになるそれは自然でしょう
心の動きだけは誰にも止められない”
など、
実に切ないですが、これを聴くファンもまた切ない思いをしたでしょう。
受け入れてファンも大人になれというメッセージだったかもしれません。
アーティストの心情を汲み取って、高いクオリティのファンタジーの中でそれを代弁する。
松本隆の力は偉大です。
私が好きなのは3曲。
A面3曲目「今夜はソフィストケート」
Holland Roseこと佐野元春の曲調が爽やかで心地良いです。
タイトル通りの洗練度です。
B面2曲目「MAUI」
美しい情景描写の中に散りばめられた、マウイ,カアナパリ といった見知らぬ地名に憧れを抱きました。
プールに落ちて壊れてしまった時計を永遠の時刻になぞらえる詩が大好きです。
B面3曲目「銀色のオートバイ」
“あの角を曲がれば海が不意に広がる”という曲調も含めた鮮やかな場面転換のところに妙に共感して、鳥肌が立ちます。
ふと思い出して聴きたくなり、海に行きたくなります。
Windy Shadow は、アーティスト松田聖子のひとつの過渡期の作品ですが、それとは関係無く、良曲揃いの名盤です。