このアルバムは松田聖子の最高傑作だと思っています。
1982年冬。
クリスマスの頃、松田聖子初の武道館公演がありました。
ファンクラブ経由で買った一番安いチケットは、舞台の裏側に回りそうな端の端でしたが、円形の会場の一角に直線のステージを作っている構造上、真横からとはいえステージにとても近い隠れた良席でもありました。
発売されたばかりの、この「Candy」と限定生産アルバム「金色のリボン」を中心に構成されたコンサートでした。
私にとって初めてのコンサートで、思春期の心は、度々こみ上げる涙を抑えられませんでした。
このコンサートのために上京し、新宿の親戚宅に泊めてもらったとき、叔母が買ってくれたのが「Candy」のLPレコードでした。
正直、子供で前作「パイナップル」の良さをまだ理解し切っていなかったことと、お小遣いとの相談で、「Candy」の購入を躊躇していた私には福音でした。
このアルバムと出会えたことは、大袈裟でなく、この後の私のパーソナリティ形成に大きな影響を与えたと思います。
松田聖子と共に生きていくことが決まった瞬間でした。
Candy 松田聖子 6thアルバムです。
作詩は全曲 松本隆。
作曲陣は前作「パイナップル」に続きニューミュージック系を中心に、財津和夫,大瀧詠一,南佳孝,細野晴臣,大村雅明の面々です。
星空のドライブ
四月のラブレター
未来の花嫁
モッキンバード
ブルージュの鐘
Rock’n’roll Good-bye
電話でデート
野ばらのエチュード
黄色いカーディガン
真冬の恋人たち
当時、聖子がDJを務めていたラジオ「夢で逢えたら」の放送内で「Candy」のアルバム紹介があった時、
「“チュンチュルル”とか、“蝶々みたいにヒラヒラ”とか、とにかく可愛いの」
ってギャハギャハ笑いながら語っていたのを思い出します。
A面3曲目「未来の花嫁」は、彼からのプロポーズを待つ女の子の複雑な気持ちを歌った人気曲、名曲です。
A面5曲目「ブルージュの鐘」はベルギーの都市へのひとり旅を歌った曲で、ヨーロッパへの憧れをかき立てます。
私が一番好きなのは、件の“ヒラヒラ”が出てくるB面4曲目「黄色いカーディガン」です。
イントロの編曲のパンチで引き込まれ、恋する乙女心の詩的表現の連続にK.O.されました。
可愛くて、幸せな気持ちになる1曲です。
可愛いと形容するのがピッタリな曲が詰まったアルバムです。
思春期の傷つきやすい心を優しく癒してくれた、まさに擦り切れる程聴いた名盤です。