1985年初夏。
これまでと趣きの異なる作品が発表されます。
作詩に松本隆の名前がありません。
事件です。
このアルバムの直前2曲のシングルは、尾崎亜美による作詩作曲の作品だったので、その兆候はあったのですが、ショックです。
何が起こっていたのかは分かりません。
米国進出ですれ違いがあったか、
はたまた結婚問題が関係しているのか、
想像の域を出ません。
松本隆が紡ぎ出す世界観を語りべ松田聖子が表現する芸術を愛する私としては、このアルバムは異端です。
とは言え、本作は、夏らしい爽やかな良盤で、作品としては好きなので記しておきます。
「The 9th Wave」松田聖子 11thアルバムです。
作詩は、
銀色夏生,吉田美奈子,尾崎亜美,矢野顕子,来生えつこ。
作曲は、
原田真二,吉田美奈子,尾崎亜美,矢野顕子,甲斐祥弘,杉真理,大貫妙子。
という松田聖子プロジェクトにおいてはフレッシュな面々です。
Vacancy
夏のジュエリー
ボーイの季節
両手のなかの海
す・ず・し・い・あ・な・た
星空のストーリー
さざなみウェディングロード
天使のウィンク
ティーン・エイジ
夏の幻影(シーン)
詩,曲はもちろんですが、編曲に大きな違いを感じます。
全曲、大村雅朗による編曲で、彼がイニシアチブを取っていたのかも知れません。
これまでのナイーブなファンタジーから、
力強く激しいリアリティのある曲調にシフトしていると感じます。
私が好きなのは、エンディング曲の「夏の幻影」です。
シングルの2曲(ボーイの季節,天使のウインク)とこの曲が尾崎亜美による作詩作曲なのですが、他7曲より完成度で抜けています。
壮大な海を感じさせてくれる曲です。
「The 9th Wave」は、ちょっと違う松田聖子を感じられる貴重な1枚です。